この舞台を支えるために−商業成功

この舞台の素晴らしさは、少数民族各舞踏をオリジナルの神事をそのまま舞台に持ってきたことではなく、舞台用に改めてリライトされていることだと思う。

ヤン・リーピンは確か50歳を超えている。

素晴らしいパフォーマーだ。

しかし、舞台監督はこれが初作品だという。

自分が踊るのと、舞台を構成するのは当たり前だが全然違う才能だと思う。それでも恐れずにやった。



また、この作品は中国で初めて有料チケット化し商業的に成功した舞台らしい。未だに中国では「チケットは無料でもらうもの」という感覚があるようだ。

中国本土だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各地で展開している。



私は珍しく今回はパンフレットを買ったが、パンフレット以外に各少数民族のみやげ物も置かれていた。



彼女はおそらく、中国の中でも貧困から成功できた稀有な人だろう。少数民族、農村の出の人が中国の都会で戸籍を持つことは難しい。

皆必死で、這い出ようとしている。その中で彼女は勝ち取った。



ダンサーたちをスカウトする辺境の地を巡るたびの中、彼女は何度もその貧困の現状に泣いたという。

貧困は、故郷を風化させる。

だから彼女は、この舞台を成功させなければならなかった。強い決意がそこにあったと思う。



パンフレットを思い出しながらぱらぱらめくっていると、スタッフプロフィールのところで目が留まった。



総経理

と書かれているそこには、モルガンスタンレーのシニア・エクイティー・インベスターとして10年以上投資業務を経験し、ヤンリーピンの作った会社の社長にワン・イェンウという人がいるという。



なるほどなぁ、と思った。

パンフレットの構成がまず違う。

そして、東京にあるレストランと提携してヤンリーピンオリジナルメニューを紹介していた。(期間限定で舞台の半券を持っていくと割り引いてくれるようだ。)

お金をたくさんかけるのではなく、何にお金をかけるかを良く練られていると思った。



メッセージだけじゃだめだ、こうやってきちんとリーチする、きちんと回収する仕組みを作っていたんだ!と思った。

もしかして、私が知らないだけかもしれないが。他にこういう展開をしているものがあるかもしれない。



故郷を思うからこそ、故郷を見世物にするのではなく、確実に収入にする仕組みを作る。

彼女は、故郷を離れて資本主義の生活をしていたけど、結局戻ってきた。

故郷を愛しているから。

中国人というよりも、少数民族人として。



そこには現代の利器−経済が必要だったと思う。