経験は甦る
物事は違う側面から見ると、新鮮に感じることがある。
何となくクサクサして生活していたこの数ヶ月。
何となく見失った感があった毎日。
せっかく大学院に入ったのに、何をやってるんだろう。
もう正直毎日をこなすので精一杯で、その割には何の成果も出ていないように感じてしまって、ずいぶんと落ち込んだ。
勉強もしてるつもりで身に付いてるのか自信もないし、どうしたら良いのかなと思う日々には、体調もそこはかとなく悪く、何となく発熱したり、下痢したり、鬱々とした気持ちになったり。
精神的落ち着きのなさは、多分まだホルモンが正常化されていないのだろう。
鶏が先か卵が先か分からないが、まだ生理は来ない。
生理が来ないと言うことは、髪の毛も正常に発毛していない。
まだ細いうぶ毛のような毛髪が抜け落ちていくのは、本当にたまらない。
髪が生えてこないから余計にイライラする。
イライラするからホルモンが安定しない。
悪循環。
血液検査的には、排卵している。
でも生理は来ない。
一体、いつになったら元の身体に戻るんだろう。
私はまだ、元の身体に執着している。
前に戻れるとどこかで期待している。
いや、戻れない。
戻れないことが分かっているのに、期待することで自分を慰めている。
一度、完膚なきまでに絶望している。
でも絶望しているときの方が、前を向いている。
何も捨てるものがないからだ。
思い出した。
絶望したとき、私は全身の毛と言う毛もなく、本当に素っ裸にされたような感覚だった。
動物は毛が無くなると、何も防衛するものが無くなる。
おびえるって、こういう感覚なのか、と思ったものだ。
おびえていたからこそ、純粋に前を向いていた気がする。
なんだ、今は何か持った気になっているけど、何も変わらないじゃないか。
何も持っていないことに気がついた。
そして、とても安心した。
何も失うものがないことが分かった。
夜眠るのが恐かった。
今も眠るのが恐い。
でもあのときとはなんだか意味が違う。
今は、まるで、もっともっと与えてよ、というわがままな子供みたいな理由だ。
純粋に、命が危険に晒されていた恐さを感じていたあの夜は、
余計なものがない分鋭かった気がする。
心に贅肉がつきすぎてる。
あのときみたいな気持ちを、思い出せてよかった。