肌を合わせたい
息子は抱っこされるのが好きだ。
ほめられるよりも好きそうだ。
肌を合わせる、それは決定的な何かを得るのに近い気がする。
いてもいいよと、存在の肯定。
あなたが好きだ、愛情の確定。
信じてもらえる喜び、勇気の源泉。
夜のしじまは、恐怖だ。
だから息子は、一緒に寝て欲しいとせがむ。
夜寝る瞬間は、死を連想させる。
私も、寝るのが怖い。
癌になってから、安眠は遠い存在だ。
日が照っているときは、遠慮せず寝れるのに。
独りは怖い。
独りは死を連想させる。
独りで生まれて、独りで死んでいくのに。
だからせめて、生きている間は
抱きしめて欲しいのだろう。
誰かに抱かれることで、今を生きる核心を得たいのだろう。
それが暫定的であったとしても。
私は息子を抱きながら、息子に抱かれている。
その若さに。
生命力に。
なにより、骨肉を分けた愛情の対象に。
もうすこし、この身体で肌を合わせたいの。