動くからだが欲しければ

今日の検診で、体液が格段に減っていた。
2cc以下になると、自然と組織が体液をリンパの代わりに吸収するという。
体液を抜くとすっきりするけど、それまでが実は痛い。
傷口も腫れる。

それにリンパ浮腫が怖い。腕が異常に、ぶくぶくに膨れる。見るも辛い写真があった。載せないけど。


今日の検診で、母が色々主治医に質問していた。
母「貧血みたいなのがあるみたいですが、食べ物でカバーするのが良いんでしょうか」
主治医「食べ物というより、時間が経てば、ということです。今増血剤を打っても、抗がん剤の影響でほとんど効果がみられません。」
母「はぁ・・・日常では食事面でしかカバーできないと思いますが」
主治医「食事面での制限はありません。何を食べてもらってもよろしい。むしろ今、血が薄い方が良いのです。幸い、すごく薄いというわけではありませんし。この時期一番怖いのは、血栓です。抗がん剤治療では血栓が出来やすい。その後遺症で脳梗塞になる可能性もあるのです。」
主治医「今は胃からの出血に気をつけねばなりません。今出している吐き気止めの薬は高価ですが、それは吐くことにより内出血を起こす可能性があるからです。吐くこと自体はかまいません。」

・・・そうなんだ。なぜか抗がん剤脳梗塞の記事がセットで見つかることがあるんだけど、こういうことだったのか・・・。
しかし主治医がいっているのも可能性だ。
おそらく、主治医が一番に思うことは、トリプルネガティブである私に、抗がん剤が一番効く状態にしておくことだと思う。
また母は母で、自分の出来得る限りの力で、私のサポートを考えてくれている。


髪が抜けていないことも不安に思って、主治医に質問した。
「そういえば抜けてないねぇ」
「そうなんです。だから抗がん剤が効いてないのかと不安です。」
「日付を計算したら、多分後3日後くらいかなー。一気にくるよ。覚悟して。それに、髪が抜けないからといって、抗がん剤が効いていないというわけではないよ。」
「(抗がん剤専門の)看護師さんが、髪の毛抜けるのまだらって言ってたんですが、先生つるっと行くんでしょうか?」
抗がん剤の種類によって抜け方が違うんだけど、僕が見てる限りは結構いくよ〜。抜けない人もほとんどいない」

なぜか主治医が言うと納得してしまう。ちょっと自分で危険だなと思いながらも。(あまりにも素直に納得してしまう自分が危険じゃないかと思った。他の先生の意見も、ちゃんと取り入れるべきなのだ。情に流されてはいけない。いつも冷静であらねばならない。)

しかし、悲しい言葉も聴いた。 「抗がん剤が効いてるって、どうやったら分かるんですか?」 「それは分からないんです。」 つまり、最後まで聞いてるかどうかはデータとして取れない・・・そういうことだ。
これはかなり辛かった。
今健康な細胞を殺しても、抗がん剤が効いてるかどうかは分からないのだ。腫瘍を取ってしまってるから、なおさらだ。
それでも続けるしかないのか・・・一瞬暗くなった。


隣の診察室で、「若いから〜」という言葉が飛び交う。
主治医はなにかにつけ私に、「あまのさん若いから大丈夫〜」という。毛が抜けないのも、白血球が3500なのも。
「先生また適当に言ってますね〜」と返す。
気の置けない、笑いのある会話だ。

「隣でも若いって言ってるね。あれは医者に向かって言ってる」
と主治医が言った。
「そうなんですか?」
「そうなの。若いって言葉は潤滑油やね〜」と笑っていた。
目はかなり真剣に体液を抜いていたが(笑)

そうなのだ。この何気ない会話が重要なのだ。
医師は医師で、患者を何かしらリラックスさせようとしている。
前は自分で必死すぎて、良く分からなかった。


今日もまた、アメリカでは抗がん剤が効かないので、抗がん剤治療をやめましょうという記事を見つけた。

その記事を書いた人に聞きたい。それでは今、がん患者は何をしたら良いんだろう?
代替治療の危険性も含めていっているのだろうか。
癌を放置する危険性を分かってて、そのことを言っているのだろうか。

おそらく、過渡期なんだ・・・狭間で生きる、がん患者の気持ちは、がん患者しかわからない。

あなたは今、健康体だから抗がん剤を受けないといえる。
じゃあガンになったら?今癌だったら?
同じ答えが返ってくるとは思えない。

抗がん剤治療以外で効果的な治療があると、聞くものもある。しかし実際自費治療で、受けるだけでもその高額な金額にひるむ。

皆、想像できないことはいえないのだ・・・残念だが。
健康だからこそ、抗がん剤治療をしたくないときのことを考えるのも良いと思う。
そのためにこのブログが役に立つのなら、本当に幸いに思う。


さて、昨日久しぶりに少し家事をした。
まだ右腕が上がらない。
痛みをこらえて腕を上げてみる。まっすぐあがらない。
それに・・・皮膚が突っ張る。
もしかして、リハビリが足りないのではないか?
恐怖だった。
腕が動かなくなったら、日常生活どころか仕事に復帰できない。
痛みをこらえて、続けて家事を行う。

布団をたたむ力がない。
物を持って移動させる力がない。

かなりショックだった。
ショックだけど続けた。へこたれるな。

右腕を上げると、右腰を上げてしまう。
皮膚が突っ張るので、それを逃すために右腰まで上げてしまう。
これでは変な癖が付く。それに皮膚の伸縮が出来なくなる。

家事を終えてから、ゆっくりとストレッチを始めた。
肩甲骨。
横になって腰のストレッチ。

それまでも肩のストレッチはやっていたが、痛みと体液がたまっている部分が邪魔で、痛まない範囲でしかやっていなかった。
しかしもうそれではだめだと思った。

空手は全身連動で体を動かし、相手を攻撃する。
それが一番理にかなっているからだ。
右を出せば左は引く。
突きは決して腕だけで突くのではない。
蹴りも然り。
足を動かすことは全身を動かすこと。
特に胸骨と肩甲骨は全身で連動させる。

思い出せ、ゆっくりとやるしかない。
骨を動かして、筋肉を伸び縮みさせる。決して筋肉を動かすのではない。
骨の動きに肉と皮膚を連動させる。

徐々に稼動範囲が広がっていく。
大丈夫。まだ間に合う。
それでも毎日しなければならないだろう。
幸い、小さな動きで骨を動かすコツを知っている。
空手をやっていてよかったと思う瞬間だ。
骨を反転させるだけで、筋は大きく動く。
見た目には大きな動きでなくて良いのだ。

空手だけでなく、動く骨、フェルデンクライスやロルフィング丹田法など色々な本を読んだ。
また、読むだけでなくそれを実践し、具体的に空手に生かしていった。
体を効率よく動かすことにとても興味があった。

ピアニストの本も読んだ。
ピアニストは指先で弾くのではなく、肩甲骨で弾くそうだ。
もちろん、細やかな指の動きも必須だが。
その本には肩甲骨から指先までの解剖図が載っていた。
(怖かったけど読んだ・・・涙)

未だ右手薬指と小指の動きが、自分としては緩慢に感じられる。
今日主治医の話を聞いて、ああ・・・と思った。
「癌を大幅に取るために、かなり皮膚も薄くなっている」
・・・わき腹の組織が、やはり大きく壊れていることを改めて感じた。
神経もまだ通っていない。それにリンパが無いことによる体液の停滞もあるだろう。
まだ右脇が麻痺して、触られてる感覚が無いのだ。
薬指と小指は、わき腹の神経と連動している。これは経験的に。
突きを効果的にするには、突いた後の引きが重要だ。そのとき、小指側から引く。このためにはわき腹の締めが重要なのだ。
今はわき腹のバランスが悪い。

しかし、もうすぐ1ヶ月経とうとしている。
1ヶ月前を思えば、随分快復してきた。
大丈夫。

自分の想像しないことが、毎日どんどん溢れる。
知らないことだらけ、それが不安としてのしかかる。

捌くしかない。
怒ったり文句いうことで問題が解決するなら、みんなしてる。
黙ってやるしかない。

癌というこの相手を、うまく利用してやること。
幸いにして、私はまだその可能性があるということ。

必ず、前より良い体を手に入れる。
動く体は、主治医は作れない。私が作るんだ。