さらば私の女性性

ガン。この忌まわしき存在。

私は胸を切る。胸が欠損する。このつらさは、当人にしか分からない。たとえ他の部位のがん患者さんと話したとしても、伝えるのは難しい。

今日友達からメールが来ていた。
「今が一番つらいと思う・・・治療が始まったら体の負担はあるけど、精神的には楽になるから、がんばって」
彼女も乳癌患者(経過2年目)だった。切った。

今日のCT結果では、腫瘍臓器(肺・肝臓・皮膚・子宮・その他)と骨に対する転移は見られなかった。そして、リンパ節への転移も。
但し、腋下リンパは手術中に病理解剖に回すため切除するという。
おそらくステージはそんなに高くない。(2か2の後半か)今のところ。

だから、命の危険性から言うと、末期の方とは比べ物にならないかもしれない。(※ただし、若いというだけで進行するので安心できない)
私がついったーやブログでワーワーギャーギャーいうのは、おかしいと思われるかもしれない。

でも違うんだよ・・・。
手術する先生や、漢方薬を信じてないからワーワーギャーギャー言うんじゃないの。まったく逆。信じてる。そしてありがたい。
まだね、なくなってしまうことが未だ分からないし、しんじられない。そして、もう女でなくなる気がする。
命がなくなるかどうかの瀬戸際で、何言ってるの!と怒られるかもしれない。
また、胸ひとつで命が救われたんだから良しとしなさい!といわれるかもしれない。
皆正解。でも間違ってる。

人間は視覚情報ってすごく大事だと思う。
女は女らしく、男は男らしく。なんで第二次性徴があるかって、やっぱりそういうことじゃない。魅力的な体になっていくことが、大人の証拠なんじゃない。
胸がない私を、果たして女性として扱えるだろうか?ホルモン治療で子宮を使えなくする私を、女性と言えるだろうか。

女性としての自尊心を傷つけられる。そういっていいと思う。

私はまさか、こんなに自分が自分の性にこだわるとは思っていなかった。女じゃないほうがいいと思っていたくらいだった。
でもなくすときに分かる。

先生は「胸はちゃんと他のところの肉から再建します。脇の筋肉の膜を切って、脂肪をココから取ります。見たところ取り易そうなので(おいおいおいwww)、ほんとに今はきれいになるんですよ。写真を見せたいくらいです(個人情報の観点から写真は見ていない)。きれいに戻すには理由があるのです。やはりきれいに戻すほうが機能的なんです。大丈夫ですよ。何も心配ない」

先生。ありがとう。先生の気持ちとそのスキルに。
でも、理解はしてもらえないだろう。再建されてもそれは以前の私ではないということを。

なってしまったものは仕方がないという。
そうです。
なってしまって初めてどれだけ大事だったか分かるという。
その通り。
でももし、時間が戻せるなら、私はやっぱり自分の体で居たい。

乳癌は局部癌なので、内臓癌(といっていいのかしら?まーとにかく内臓の癌ね)とは転移・悪性度など色々な点からして非常に「やりやすい」癌らしい。
内臓の癌はそれほど怖いらしい。(先生の言ってたことではあるが、雑談程度に聞いてね。どっちも危険には間違いないんだから。)

ホントに怒られると思うけど、承知で言うと、見えないところの癌が良かったな・・・。
それは他の癌の人からすれば、「乳癌のほうが簡単で良いのに」ということになる。どっちにしても、無いものねだりだ。


乳房は再建できると言う。
簡単に言わないで。

私は今回、外科にいって初めて分かった。
医療って、やっぱり高度な技術と知識と経験の集大成なんだよ。特にがん治療に関しては日進月歩進んでいるみたいだし、その膨大な資料のほとんどはおそらく英語その他外国語が基本だと思う。
読み解くだけでも大変だ。相当な頭がないとだめだ。
それを頭だけじゃなくて、手で行う。機械じゃだめだから。(補助機械はあるけど、オートマティックじゃないって意味)

すごい仕事なんだよ。
医者に、看護師になるって。簡単になれない。
今医者不足って言われてるけど当たり前だよ。10年間ほったらかしにしてたら育つもんも育たない。
そして、残念ながら「技術」と付く仕事には「人によって」という意味がある。腕のいい先生が自分の担当医になってくれるとは限らない。

一般医療と癌などの高度専門医療は、やはり勉強からして違うらしい。
だから信用してる。特に今の先生は症例も多いみたいだし、何より自信があるみたい。

だけど、スキルは私の心は救ってくれない。
医療の前では私はいわば細胞の一種なのだ。実験マウスの一固体なのだ。
卑下も否定もしない。事実だ。
そうしなければいけない。スキルは気持ちじゃないから。

思っているよりかは、胸がえぐれないことを祈る。
皮膚の一部も、切り取るらしいから・・・。