朝日射す二人の影

このところずっと眠れなかった。
不安に駆られ、疲れてはいるのに夜になると目が冴える。
精神的にまいっている時の、悪いあがき方。

朝6時に起こしてくれと、仕切りにいう息子。
今日は起きれたようで、私は眠かったのだけれど無理やりおこされた。

「歩こうよ」

彼はわたしが毎朝走っていたのを知っている。
彼自身、最近ぽっちゃりしているのを気にしているのもあり、朝走ろうという。
私はまだ走れない、と言うと、それじゃあ歩こうと言う。
とにかく外に出よう、と。

本当は外に出るつもりはなかったけど、彼がすごく悲しそうな顔をしていたので、すぐ着替えて外に出た。
お互いiPhoneiPodを持って、お気に入りの曲を聞きながら。

近所に大きな公園があり、いつも走っていたコースを歩いた。
今日は昨日の台風の影響で、気温も低くひんやりしていた。
沢山のジョガーや散歩する夫婦、友達連れの人たちを横目に、私たちはひたすら歩いた。

久しぶりに、朝日が美しいと思えた。

ここのところ、彼にはずっと心配をかけていたに違いない。
小さな心に、親が病気で、はっきりとした説明もなく、でも死ぬかもしれないということだけは何となく伝わってしまっていた状況で、引っ越すかどうか、金銭的なこと、自分になにができるかなど、きっと必死で考えていたんだろう。

「おかあちゃんは、なんの病気なの?」
最近何度も聞かれるが、私は彼にわたしの病気をわたしの口から説明するのがとても怖い。
でも嘘もつけない。
何となく、こういうわたしの弱さが、彼に余計な心配をかけているのをわかっているのに。

二人で朝日を見た。
橋の上から。

「きれいやなぁ」
彼はつぶやいた。

私たちは親子は、小さい。
どんなに小さくても、懸命にそこにいる。
色々なことがあるけど、一人ではないことはたしかに感じる。

何かできることではなく、ただそこにいてくれること。
もちろん、普段の生活は親であるわたしが面倒を見てるし、片付けなかったり約束を守らなかったり、イライラすることはある。
でもそれ以上に、今朝の様に、沢山守ってもらっている事を実感する事もある。

彼も、立派な患者を支えるパートナー。

短い散歩時間を、彼は惜しんでいた。

「また明日もいこな」

出来るだけ、続けよう。